温故知新

有能な建築家である友人がスペインへガウディの建物を見に行った。1年間に約3500万人がスペインを訪れ、約2000万人がガウディの4つの作品(建物)を見るためにバルセロナを訪れるそうである、と友人は言う。

旅行者が宿泊代や食事代など1人5万円をバルセロナで使うとしたら、年間1兆円の経済効果である。これから最低200~300年位は観光客が訪れると考えられている。1人の芸術家が生み出した利益としては最大ではなかろうか。

最近、ワインの目隠しで競うコンテストで、上位5位までをカリフォルニアワインが占めたそうである。カリフォルニアワインの基礎を作ったのは、幕末の薩摩藩英国留学生の一人だった長沢鼎である。またサッポロビールの生みの親とされるのも留学生の村橋久成である。

鹿児島は焼酎だけでなく、ビールやワインにも深いつながりがあるので、アルコールミュージアムをつくってみてはどうだろうか。人類が存続する限り、飲ん兵衛はいるだろうから、ほぼ永久にに存続するであろう。

浅田次郎原作の映画「地下鉄(メトロ)に乗って」を観た。戦後間もない闇市の風景や東京オリンピックのころの町並みがスクリーンに映し出されるのを観て、何かほっとする心の安らぎを感じた。

先日、南日本新聞にJR鹿児島駅(鹿児島市)周辺の開発計画の記事が載っていた。

私は2年前に駅に近い長田町に引越し、近くの市場や昔ながらの繁華街、飲み屋街をうろついている。昭和のにおいがぷんぷんするのである。

鹿児島駅に隣接する広場を「レトロ・昭和パーク」にしたらどうだろうか。

長屋風の露店があり、吉永小百合さん主演の映画が上映され、銭湯があり、風呂上りに藤椅子に腰掛けてビールが飲め、歌声喫茶がある。

開発を担当する方々、一考に値しないだろうか。

平成18年11月10日 南日本新聞「南点」掲載