明日に架ける橋、21世紀に目指す医療

生きていくということは単に命がある、心臓が動いているということではないはずです。
家族、友、恋人、仕事仲間、学友等と、思い出を語らい、また、食事をし、酒を飲みながら世間話や馬鹿話をし、笑い、怒り、
涙を流すことが生きていくということであり、基本的生活だと思います。
そして、この基本的生活は、たとえ癌やエイズをはじめ種々の病気のため終末期を迎えつつある患者さんにも健康な人と同様に、当然の権利として与えられるべきものだと思います。

 しかし、現在の医療は、治癒させることが、第一の目的であるため、終末期を迎えつつある患者さんに適切な治療やケアを施行できる
施設やシステムが確立されておらず、そのため、病院という収容所に隔離されている状況にあります。

 私は、終末期の患者さんが、上述のような基本的生活を送ることができつつ、適切な医療を受けることができる施設をつくりたいと、かねがね思っておりました。
つまり、日常生活の決定権は患者さん自身にあり、病気に対しては自分自身が主治医であるという意識を持つことができ、また、自分の部屋のように家族や友人と語らいができ、愛する人と手を握りあって眠ることができる施設を作りたかったのです。

 誰もが、自宅で、自分の部屋で眠るごとく息をひきとりたいものです。そうでなければ、ぎりぎりまで、自分の部屋で暮らしたいものです。

 私が目指すのは、ここで死にたいと思いたくなるような施設であり、もしそれが病院であるなら、堂園メディカルハウスのような施設はそのような病院が全国に普及する第一歩になると思います。

 『感動は勝利者のみにあるものではない』そして、幸福は才能に応じて来るのではなく、努力に応じて来るものです。名も無く貧しくても、努力してきた人が、安らかに最期を迎えられる施設が欲しいと思い。その第一歩として堂園メディカルハウスを設立しました。

 この堂園メディカルハウスをはじめ、これからの事業計画を『フロックコートプロジェクト』と名付けました。

 癌の緩和ケアは、英語ではpalliative careと言いますが、palliativeの意味には、北風の寒い日に旅人にフロックコートを掛けてあげるという意味もあるそうです。つまり、この計画に参加する人、建物が、人、社会、自然を含め、地球そのもののフロックコートの役目を果たすのだという理念のもとに、集まり、実現することを目的にしているのです。

堂園メディカルハウス 院長 堂園晴彦